2013年2月7日木曜日

[614] Vladimir Tarasov - Atto VII: Watrer Music


Label: Sonore Records

Catalog#: SN007 CD
Format: CD, Album 
Country: Lithuania
Released: 1994
DISCOGS

1. Atto VII "Water Music" 47:54


ソ連時代からフリージャズ界で活動するドラム奏者ウラジミール・タラソフ(Vladimir Tarasov)と、現代美術家イリヤ・カバコフ(Ilya Kabakov)との共作インスタレーション「Incident at the Museum or Water Music」(Ronald Feldman Gallery, New York, 1992)の実録盤。カバコフの絵画が展示された会場、天井に仕掛けられた配水管から、雨漏りのようにタツタツと、バケツやボウルに滴る水による自動パーカッション演奏。ジャケットには展示の構想スケッチが描かれています。本作はATTOシリーズの7番目。ATTOシリーズは全11作あり、2006年にはDVDをプラスしたボックスセット「Complete Set of Works - Atto I-XI & Sound Games DVD」でまとめられましたが今では入手が難しいようです。(以前のエントリー#459、アンビエント・ジャズ・セッション「Salzau. Music on the Water」は、ドイツ北部ザルツァウでタラソフによるインスタレーション上で行われた演奏を環境音とともに収録した作品。録音の状況や趣向は異なりますが、Atto VII: Watrer Music同様に風景のひとつの記録として。)


自動パーカッションの演奏にも聞こえ音楽的に楽しめる。設定された空間は雨漏りのする美術館という風情だが、これは社会主義が力を失った隠喩と見ることができるかもしれない。あるいはカバコフがどこかで見た出来事に思いを寄せたものなのだろうか。彼は共産圏での生活様式やフォークロアを作品のモチーフに用いてきた。理想によって描かれた世界つまり制御された世界と、物理的条件によってしか制御できない水の音との対比。このCDはタラソフ名義だから、音響に関してカバコフは関わっていないだろう。音だけ聴いていたのでは作者の意図はわからない。しかし実況録音であるこの水の音群には、美術館に響いた残響がかすかにまとわりついている。

寡黙で繊細な音盤たちより(抜粋)

vladimir tarasov solo releases

Incident at the Museum or Water Music September 12–October 17, 1992
Art in Review